あの日の記録

推しは神様じゃないけど解釈は信仰

ミュージカル「チェーザレ 破壊の創造者」初日初見感想(ネタバレあり)

前置き

あけましておめでとうございます。

改めて、初日が開くことのありがたみを噛みしめる日々です。

この前まで狂ったようにJBを観ていたはずなのにそれの感想まとめを書く暇もなくチェーザレ初日を迎えてしまったことに驚きつつ、取り急ぎの感想雑記です。

このところこういう文章を書いていないので読みづらいところが多々あると思いますがお許しください。

明らかな間違い等あればご指摘お願いします。

前提

  • 1/7(土)ソワレ ヴェルデ回 作品自体初見
  • 原作未読
  • 地理も歴史もとても苦手
  • 内容についての事前知識は「中川晃教コンサート2020 feat. チェーザレ~破壊の創造者~」と「Japan Musical Festival 2022 Winter Season Day3(夜公演)」と公式サイトのみ
  • 普段は中川さん(チェーザレ役)と藤岡さん(ダンテ役)のファンです、贔屓目はあると思います
  • ネタバレ配慮一切なし

感想

  • 予習してないから分からないかもしれないと思ったけどそこまでではなかった。ただかなり説明的でずっと集中して一言一句聞き逃すまいとしてたので、いつもの観劇よりだいぶ疲れた気はした。もちろん心地よい疲れです
  • タイトルは「チェーザレ」だけど、「チェーザレの生涯」がテーマというより、「チェーザレによって人生が狂った人たち博覧会」みたいな感じ。大人も子供も16歳の少年に人生狂わされすぎだろ。チェーザレ、罪な人よ……(生まれが罪の子、という意味ではなく)
  • チェーザレの内面に肉薄していくのではなく、その思想や言動を描く伝記のような作品。チェーザレが心情を独白する歌はあるにはあるんだけど多くなくて驚いた
  • これは私の次回観劇時の宿題ですが、「この物語を通してチェーザレは何を得たのか? どのように成長したのか?」を知ろうとして観ていても大きな答えが得られるわけではなさそうだから、「チェーザレが周囲にどのように影響したか?」を主眼に観た方がいいんだと思う
  • 「え、そこで終わるの?」って感じの終わり方ではある。ミュージカルをそれなりに観ていると、初見の作品でもラストの曲が始まると「あー、これで終わりなのね」って分かるようになるから、曲が始まったときに「これで終わる」ことは理解したけど、ストーリー的には全然終わるところじゃない印象だったからだいぶ混乱しながら観てた
  • 音楽がいい、好き。同じメロディで「チェーザレ」が「アンジェロ」になったり「ハインリッヒ7世が座る椅子だ」が「チェーザレ・ボルジアが座る椅子だ」になったりするのがいい。頭がポンコツなので全然覚えられなかったけど他にもいくつもあるはず
  • 特にチェーザレは単純に歌う量が多いので、これを別の公演の本番と並行して稽古してたって何……? となってしまった
  • 衣装にすごくこだわりを感じた。実際にあの服を着ていたんだろうなって思わせる力がある。少なくとも、服飾史に明るくない私の目は完璧に騙せてます。それでいて機能性もあって、動きの邪魔ではなさそうだった
  • スペイン団の黒衣装が色数は少ないのにとても洗練されて地味すぎずかっこよくて好き
  • セットはミュージカル「ローマの休日」を思い出させるような階段セットを盆に載せ、さらに別で可動式の階段2つを駆使しながら転換するスタイル。シンプルだけどその分映像で補完してた
  • 歌が上手い人は歌が上手い(それはそう)
  • あの時代の16歳が現代の16歳と全然違うのは分かるけども、それにしてもチェーザレの聡明さやしたたかさには驚いた……。あれは良くも悪くも目立つし崇められたり過度な期待をかけられたり目の敵にされたりしますわ。納得。歌の上手さで間接的に「常人ではない」ことを分からせてくるのは中川さんの十八番だけど、今作もピカイチ。さすがです
  • 張り上げるわけではないのにキリリと締まって美しい中川さんの歌がやっぱり好きです。歌の中に確かな意志を感じる
  • アンジェロのほわほわ感がいい味出してるし、このキャラがいなかったら初見の人は置いてけぼりになるのでいてくれてよかった
  • チェーザレは生まれたときから常に政治とともに生きてきたから、そういうものとは全く無縁のアンジェロに「ふーん、おもしれえヤツ」って思っちゃったんだなあ。そりゃ、ああいう環境で育った人にはアンジェロは異常な人に見えるよな
  • アンジェロの服を着せてもらってお祭りに行ってはしゃいでるチェーザレかわいい。「珍しく童心にかえった」みたいな言われ方してたけど本当にそうでしょ。そんな中でも自分の政治的立場や主張を忘れてないところはいかにもチェーザレだけど
  • 貧民街(?)みたいなところに行ったときにチェーザレが自分の無力さを改めて痛感して自分自身に怒ってるのが好きだった。そういう自分に厳しく芯の強い人が私は好きだし、かっこいいなと思う
  • 結局のところ「チェーザレという存在が罪」って部分はあるんだろう。天才にはつきものだ。もちろんチェーザレには何も非はないんだけど、チェーザレがいると周りが勝手におかしな方向へ走り始める
  • ロドリーゴとジュリアーノがバチバチしてるシーンの緊迫感と大人の汚さがすごく好き。別所さんと岡さんが容赦せずぶつけ合う圧が重くのしかかってくるのが気持ちよくないわけがない。それに、このシーンがあるのとないのとでチェーザレにかかっている重圧への見方も大きく変わると思う
  • ジュリアーノも別に悪い人ではないんだよな……、あくどいところはあるけどそれはロドリーゴも同じだし。自分の信ずる道を行くためにたまたまチェーザレが邪魔だっただけ。この役を岡さんが演じられるとこの部分の説得力がすごく強くてありがたい
  • チェーザレは16歳にしてはあるまじきレベルの責任を負わされ謀略に巻き込まれているにも関わらず、精神的につぶれることはなく、表面上は平気平気って顔なのが強すぎて逆に怖い。どんな訓練を受けてきたらそうなる? 本当に血の通った人間?
  • ロレンツォさんいい人そう、すごくいい人そう
  • ラファエーレって奇抜で奔放な印象がすごくあるんだけど、実はこの人もこの人で苦労が多すぎて、そうやって抜きどころを作って自分を守らないと生きていけない時代だったのかなと思った
  • ダンテ登場時の異質感、ただ者ではないことやその時代の人ではないことを一瞬で分からせるオーラがすごすぎて秒で納得した。これは音楽の力だし歌の力だし声の力。あの声であんな風に歌われたら全部信じる。あからさまな振り込め詐欺の電話でも信じるし何なら貯金全額振り込む
  • 藤岡さんに今一番質問したいこと「お髭は地毛ですか?」
  • ハインリッヒ7世は、仮に日本に生まれていたら死後に後光が差してる仏像を作られるタイプの人だと思う。寛大さとカリスマ性を持ち合わせている
  • ダンテがチェーザレに「聖なる悪魔になれ」みたいなことを言うの、呪いさながらでぞわっと鳥肌が立ってしまった。好き。先達が少年にかける呪いだ……
  • ダンテは実際はあの時代にはとっくに死んでいる人だから、チェーザレが見ているダンテは心象風景みたいなものだと解釈しながら観ていた。チェーザレが人生に迷ったとき、ダンテの神曲やその思想にすがりたくなるけれど、同時にそれは自分が選ぶべき指針ではないのだと理解しているんじゃないかと思う。でも、創る側はどのような意図でダンテという人物を創っているんだろう?
  • チェーザレは怪物のような父親にさえ自分のペースを崩さずに接するけど、ダンテに対してだけは相手の間合いに飲まれるんだなと思って……、ダンテすごい。チェーザレがとりつかれたようにダンテを見つめていたのも印象的だった
  • ミゲルがチェーザレに向ける複雑な視線が好き。チェーザレのことを一番近くで見てよく理解しているし、自らの命に代えても守る覚悟はとっくの昔にしているけれど、一方でチェーザレ人間性には期待していない、その絶妙さ。ただの主従関係ではなく、同世代であるからこそ、2人の間にある身分・立場の差や果たすべき役割の差について悩んだうえで今は自分なりに答えを見つけてチェーザレの隣にいるんだろうなと思った
  • ミゲルがアンジェロに心を開くシーンよかった。チェーザレにアンジェロという友達ができたことが嬉しいっていう側面もあるのかな
  • 私たぶんジョヴァンニが好き。穏やかで戦いが嫌いで繊細で、自分自身も十分才能があるのに、チェーザレが圧倒的すぎて凡人に見える人。ジョヴァンニはチェーザレに比べて正統な生まれではあるのに、自分が貴族ではないことを気にかけているのは人間らしかった。チェーザレを妬んだりつぶそうとしたりしないところはしっかりしてる
  • ジョヴァンニと話しながらチェーザレがソファに寝転がって脚を上げてるのがお行儀悪くてかわいい。家では絶対そんなことさせてもらえなさそうな人生だから
  • チェーザレがジョヴァンニに自分は味方だと言うのはそのときは本心だけど、かといっていつでも裏切れてしまいそうなところがチェーザレの鋭い精神性だなと思う。全く別の作品だけど「背中にナイフ突き刺し手にはキスをする」というフレーズを思い出したり
  • ジョヴァンニとチェーザレが交わす銀行についての問答がなかなか面白かった。私がキリスト教をよく理解しきれていない部分はあるだろうけど、「神」に相対する「罪」って何なんですかね
  • ロベルトとドラギニャッツォはチェーザレというの存在の犠牲者なんじゃないか。チェーザレがいなければ道を誤ることも死ぬこともなかった人
  • チェーザレはロベルトとドラギニャッツォの死に責任を感じるわけではないけれど、何も感じていないわけでもなくて、この人にも人の心があるんだなと思った。チェーザレは2人の死を決して無駄にはせず、平和と安寧をより一層希求するための糧にしてくれることでしょう
  • ドラギニャッツォ、切ないな……。ああする以外に生き方を知らなかった哀れな人
  • ミゲルが死にかけのドラギニャッツォにかけた言葉は厳しかったけど真理だし、あのことに自力で気付けなかったドラギニャッツォにはどのみちあの時代を生きる術はなかったのだろうとも思う。チェーザレは生まれながらにしてチェーザレだったわけではない、並々ならぬ努力と胆力、精神力と知力、そして覚悟がチェーザレチェーザレたらしめているのだという話
  • 渥美先生の擬闘はさすが美しいの一言。舞台上を俯瞰で見たときの配置の無駄のなさが素晴らしい。階段セットの空間的な上下もきれいに使われていて見事