あの日の記録

推しは神様じゃないけど解釈は信仰

拝啓、親愛なる私の推しへ。

あなたに出会ってから、気がつけば何年も経ってしまって、一ヶ月に一回は会いに行くのが当たり前になって、あなたは数々の大作に出て、名前はますます売れ、私は大学生になりました。

親愛なる私の推しへ。

あなたは他人の人生を変えるほど力のある人間なのだと知っていてほしくて、この手紙を書いています。 間違っても、あなたのことを責めるつもりはないし、何かの責任をとってほしいわけでもありません。 ただ、あなたは、あなたが自分で言うほど無力ではなく、魅力のない人でもないことを、私はあなたに知っていてほしい。 あなたの実績にふさわしい自覚が伴ってくれればいいな、と、最近、あなたの発する言葉を受け取っていて思います。

もちろん、謙虚でいることは(この国では)美徳とされますし、それを向上心に変えられるのであれば、素晴らしいことでしょう。 でも自分を卑下するのは違う。 あなたがステージ上にもってくるものは、あなたが言うほどふらついていないし、あなたが言うほど無価値でもない。 私はあなたが見せてくれる景色が好きです。 大好きです。 そう思っている人がいることを忘れないでほしい。

芸能人は人気商売です。 周りと比べて焦ることもあるでしょう。 以前と比べて落ち込むこともあるでしょう。 それは仕方のないことです。 しかし、だからといって、それがあなたの創ってきたものを否定する材料にはなりません。

あなたが見せてくれるものを好きだと言う人は、少なくとも一人はいます。 私がいます。 私はあなたを応援したい。 あなたが見せてくれるものがいかにエネルギーに満ちていて素敵なのか、あなたに伝えたい。

だから、知っていてください。 あなたのおかげで私の人生が変わったということを。 あなたはステージに上がることを通して、一人以上の人生を救った人であるということを。

こちらには見えないところで、苦労していることがたくさんあるんだろうと思います。 ステージの上では笑っていてくれるけれど、その裏であなたがどれだけ努力してどれだけ歯を食いしばってきたか、いつも想像しています。

私はただの観客なので、想像することしかできません。 あなたもそれを分かっていて、なるべく隠そうとしてくれているんでしょうね。 その苦しんでいる過程を見せてほしいと望んでいるわけではありません。 きっとあなたには、そういう「裏側」を感じさせたくないという、意地やプライドがあるでしょうから。

だから私は、あなたの悩んでいることにまで詮索はしないし、親身になって問題を共有することもしません。 その分、あなたのいいところをたくさん手紙に書きます。 つい「できないこと」にばかり目が行ってしまうときがあっても、「できること」もあると思い出してください。 あなたがどれだけすごい人なのか、しっかり思い出してください。

あなたがまたステージに立って、歌ったり、踊ったり、お芝居をしたり、お話をしたりしてくれるのを、私は楽しみにしています。 でも、あなたが本当にやりたいことがステージの上にないのなら、今の仕事にしがみついていなくてもいいんです。 あなたには、あなたが一番輝ける場所で、輝いていてほしいから。 あなたの一番の魅力は、他人を元気にするエネルギーだと思うから。

親愛なる私の推しへ。 大好きです。 どうかあなたがあなた自身のことを、きちんと認めてあげられますように。